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2014年2月3日月曜日

【考察】炎の剣は本当に強いのか?

 最近、ファンタジー小説を書く為に世界設定を考えています。
 ファンタジーと言えば剣と魔法! という短絡的発想に基づいて、ヒロインが炎剣を操る設定にしたところまでは良かったのですが、そこで私はふと考えました。

「炎の剣って、本当に強いのか?」

 言い方を変えれば、剣に炎を付け加えることで何かメリットはあるのか? ということです。
 ファンタジー小説を書くのにそんなこと考える必要ないのでは……という自分の心の声は聞こえないことにして、炎の剣が強いのかどうかを、考えてみました。



(作者注;この記事には、軽度ではありますが、残酷な表現が含まれています。
 またこの記事は、決して戦争を肯定するものではありませんので、その点をご留意ください)

























1、戦争における剣と炎の役割について

 小説にリアリティーを求めるならば、史実を基にするのが最も手っ取り早く、確実な方法です。今回も、まずはそこから調べることにしました。

 まず剣の役割ですが、これは言わずもがな、人を斬ることです。おそらく、歴史上戦争で最も多く使われてきた武器なのではないかと思います。
 銃器が生まれてからは活躍の場が減っていますが、それでも近接戦闘においては有効な武器です。私の印象としては、鈍器よりも致命傷を与えやすく、相手を失血死させやすい武器という印象です。

 一方、炎(主に火炎放射器)ですが、これは剣とは対照的に、あまり活躍の場がなかったようです。
 まず、通常の戦争において炎では致命傷を与えにくかったことが、その第一の原因です。つまりこれは、ライターの炎を一瞬触ったぐらいでは火傷をしないのと同じ理屈で、炎で火傷を負わせる前に、敵兵の剣やら銃やらで返り討ちに遭ったということです。
 また、火炎放射器のガスボンベが非常に重かったことも、戦争で活躍できなかった原因の一端です。

 火炎放射器が役に立ったのは、例えば敵が洞窟の中に立てこもった時に、姿の見えない敵を皆殺しにできる殺戮兵器として活用されたとか、そういう限定的な状況が多かったようです。しかしこれは炎熱の効果というよりも、炎が生み出す煙や酸素の欠乏などが死因だったそうですから、ファンタジーの世界の炎魔法とはイメージが遠くかけ離れています。
 他にも、森に隠れた敵を炙り出す為とか、自陣に都合のいい地形を作り出す為とか、何かと炎という武器は、地味でグロテスクな戦法にばかり使用されていたようです。

 筆者は、炎の派手な活躍を描いた実話はないものかと探しに探して、最後にはレーザービームにまで辿り着いたのですが(何故?)、結局のところそれも戦争で使えるような代物ではなく、そもそもレーザーを炎に分類していいかどうかも微妙なラインでしたので、ここで炎に関して調べるのは諦めることにしました。



2、剣と炎の相性について

 剣は、鉄と鋼でできています。
 例外もあるでしょうが、何にしても金属であることには違いがありません。

 金属を炎で炙るとどうなるのかと言いますと……

 それは当然、溶けます。溶けなくても、材質が変わってしまいます。
 そもそも金属を加工する時は、溶かしたり火で炙ったりして加工するのですから、金属が火に弱いことは自明の理です。

 炎魔法の絶妙な火加減で、剣を良い具合の斬れ味に変化させられないものか……なんて考えてみた自分は馬鹿でした。大馬鹿でした。
 刃に熱を加えるというのは、剣を作る上での一工程でしかありません。それだけで斬れ味が良くなるわけがありません。
 それにそもそも、戦闘中に炎を纏ってなかったら炎の剣の意味がないじゃないですか。

 では金属でなかったらどうだろうと考えました。そこで、火に強くて硬い材質を、石をメインに探してみたのですが、私には見つけられませんでした。
 そもそも、熱を加えても材質が変化しないという性質の石が見つかりませんでした。大抵は粉々になってしまうようです。
 更には、火に強い物質は脆くて壊れやすく、とても戦闘中に振り回せるようなものではないということがわかった為、炎の活用性に続いて、こちらも諦めることになりました。



3、【結論】炎の剣が役に立つとすれば……

 考えれば考えるほど、炎の剣は役に立たないような気がしてきました。
 しかし諦めません。炎の剣を振り回す女性を描くことは、私の夢なんです。

 ここはもう思い切って、剣の材質は無視することにしました。なんてったってファンタジーなんですから、どんなに炎を纏っても材質も切れ味も変わらない金属があってもいいじゃないですか(どうやってその剣を加工したのかは甚だ疑問ですが……)。

 しかしこうして課題を一つ投げ飛ばしたところで、デメリットが一つ消えただけです。肝心のメリットが思いつきません。

 それこそ火炎放射器のように炎を浴びせるとか、火の玉を投げて遠くで爆発するとかなら使い途がありそうなのですが、剣に炎を纏わせるとなると……普通に鋭い剣で斬ったほうが早いような気がします。切り傷に熱を加えたところで、それが致命傷になるわけでもなし、むしろ出血を止める効果とかありそうです。つまり逆効果。

 何より問題になるのは――ここまで敢えて触れてこなかったのですが――剣が燃えていると自分自身が熱いということです。
 敵に効果があるほどに熱い炎なら、敵よりもまず自分にダメージを与えることになります。諸刃の剣どころの騒ぎではありません。それは言うならば逆刃の剣です。

 仮に人間を瞬間で焼き斬れるほどの温度だとしたら、それはもう触れていなくても周りの人たちはみんな日焼けします。剣を見ただけで目が焼けます。最早それは炎の剣というよりも、光の剣です。確かに強いですが、私が思っている物とは違います。

 悩み抜いた末に、私は一つの結論に達しました。どうせファンタジーなんだから、全部自分の都合の良い設定にすればいいじゃないかと。
 私にとって都合の良い炎の剣とはつまり、刃自体は人を焼き切れるほどの高温で、刃から離れると普通の空気中と変わらない温度ということです。この設定でいくと、刃の周りをバリヤーのようなものが覆っているということになります。

 バリヤー! いいじゃないですか! ファンタジーって感じで!

 こう考えると、刃そのものすら必要ないように思えてきます。なにせ炎で焼き斬るのですから。某宇宙戦争映画の剣のように、戦いの時だけバリヤーと炎が伸びればいいのです。
 これなら材質云々で悩む必要もありませんね。なかなか良い考えなのではないでしょうか。

 この設定で行くとすれば、いくつかのメリットも見えてきます。

 まず一つは、剣の斬れ味が永久に落ちないということです。
 剣という物は、人を斬ると斬れ味が極端に落ちるのだそうです。どのような熟練者であっても、これは変わりありません。つまり、一人で何人もの敵を相手取ることは、物理的に不可能だということになります。
 しかし炎の剣で焼き斬るなら、斬れ味はいつまでも変わりません。代わりに魔力とかいうものが減っていきそうな気がしますが、そこはまた後で考えましょう。

 二つ目のメリットは、軽いということです。
 剣の重さというのは種類によってさまざまですが、1本あたり大体1.3kgぐらいあるようです。それを自由自在に振り回すというのは、かなりの腕力があってこそできる芸当だと思われます。
 しかしこの炎の剣は、あるのは柄だけで刃はありません。当然重さなど無いに等しいので、力がない女性の武器としては打ってつけなのです。



 こうして考えると、なんだかうまくいきそうな気がしてきました。

 ……すみません、嘘です。とてもうまくいきそうに思えません。バリヤーあたりから色々と破綻しています。
 空想の世界に現実の法則を持ち込むのは無理があるというのが、残念ながら今回の結論です。

 それがわかっただけでも考察した意味があったのではないかと、負け惜しみを言ってみる泉野でした。

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