私は一時期、小説サイト「エブリスタ」で、人の小説へのレビューを書き続けていました。短編小説も含めると、全部で80ぐらいレビューを書いたでしょうか。
私は元来、悪いものはハッキリ悪いと言いたい性質で、レビューの時も、作者さんが辛口レビューOKと仰った時はかなり辛辣なレビューをしていました。価値観の押し付けとも受け取れるようなレビューを何度も書きましたが、幸い作者さんと衝突することもなく、私は、私自身が飽きるまで、レビューを書き続けることができました。
言ってはなんですが、「エブリスタ」に掲載されている作品は、全体的にはそれほど高いレベルではありません。――だからこそ私のような未熟者にとっては居心地のいい場所となるのですが――そんな中でも、たまに良作が紛れ込んでいることがあります。ランキングに載ることもなく、ひっそりと紛れているのです。
そういう作品を読んだ時、私はその作品のことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思いました。そこで「泉野戒のオススメランキング」なるものを始めたのですが、ランキングをつけるとなると、どうしても評価の明確な基準が欲しくなります。
私なりに真剣に考えた結果、小説の良し悪しを決めるのは、下記の6つの要素だと結論づけました。
① 情景描写力
② 心情描写力
③ 構成力(ストーリー)
④ 演出力
⑤ キャラクター
⑥ 独創性(オリジナリティ)
これを決めたあとで、大手出版社の新人賞の評価基準を知ったのですが、それほど違いはありませんでした。
各要素について、これから順に説明させていただきます。私なりの小説を書くコツのようなことも書いてありますので、良ければ参考にしてください。
① 情景描写力
文章力、とも言い換えることができます。
風景や状態、キャラクターの姿・動きなど、アニメや漫画なら目に見える部分が、文字の中から伝わってくるかどうか、ということです。基本的には地の文から評価するのですが、会話から動きを伝えようとする手法などもありますので、そちらも評価に含めます。
漫画で言えば、絵の上手さぐらい重要な要素とも言えます。しかしその一方で、どう考えても漫画以上に伝わる情景描写はできません。姿や形は、字で伝えるよりも絵で伝えるほうが伝わりやすいに決まっているのですから。
せっかく漫画ではなく小説を書いているのですから、小説の良さを十全に発揮するべきだと、私は思います(これもある種の価値観の押し付けですね)。つまり、キャラクターの髪色やら体格やらをあれこれ書くよりも、キャラクターの性格をリアルに表現して、そこから読者にキャラクターの身なりを想像してもらうとか、一人称視点なら、景色よりも景色を見た時の語り部の心情に重点を置いて描写するとか、そういう手法を身につけることが肝要だと思います。
とは言え、言うは安し行うは難し。私自身も、できている自信がないんですけどね。
② 心情描写力
一般的には、情景描写も心情描写も同じカテゴリーの要素として扱われるのですが、私個人的には、この2つは別のものだと思っています。
キャラクターの心の動きを上手く書けているか、ということを評価するわけですが、先に書いた、語り部の心情に重点を置いた情景描写、というのもありますので、被るところは往々にしてあります。また、キャラクターの心の動きがリアルに伝わってくるかどうか、という観点で見ることもありますので、⑤の「キャラクター」という要素とも被ります。しかしそういうことを言い出したら、6つの要素は全てどこかしら被っているので、もうこれ以上は言いません。
ジャンルが恋愛だったり、ホラーだったりした場合は、重要な要素となります。逆にバトルや推理、官能小説などは情景描写力のほうが重要になりますね。私はどちらかと言うと、前者のほうが得意です。
③ 構成力(ストーリー)
物事の辻褄があっているかとか、ストーリーの起伏(つまり盛り上がるところと落ち込むところ)がちゃんとできているかとか、そういう部分を見ます。
ギャグがメインの話なら、辻褄云々はそれほど意識しなくても良さそうです(それでも、回収できていない伏線があったりするのはマイナスポイントです)。逆に推理・ミステリーは、この構成力こそを、最も重要視します。その話の方向性によっては例外もありますが、できれば、「偶然こうなった」とか、「気持ちでなんとかした」とか、そういう不確定要素を省いたほうが、気持ちの良い物語になります。
ストーリーの起伏に関して言えば、一般的には「起承転結」が最もいいとされています。もしくは、「起承転承転結」ですね。
ここから先は一般論の連続になりますが、良い物語は、その「起承転結」の入れ子構造になっているもの、だそうです。つまり、話全体で見ると「起承転結」になっていて、その内の「起」の部分だけを見るとその中でも「起承転結」ができあがっていて、さらにその中の「起」を見ると……、ということです。特にオチもなくダラダラと続いていく話ほど、読んでいて疲れるものはありません。
④ 演出力
最初に紹介した「エブリスタ」は携帯小説サイトだったので、ページを作者の好きなところで変えることができました。また、紙媒体の書籍なら多すぎて許可されない改行の連続なども、無問題でした。こういった、いわば「文字の配置」とでも言うべき要素を、ここで評価していました。当然、紙の書籍ならあまり重要視されない部分ですが、携帯書籍ならではの評価要素、といったところでしょうか。
改ページ、改行の他に、文字をあえてカタカナにするとか、一文字ごとにスペースを入れるとか、そういった手法も使われていました。こちらは紙媒体であっても、ライトノベルなどでは割と使われやすい手法だったりします。
使い方を間違えると大変読みづらく、痛々しい結果になってしまいます。実際に、改ページのしすぎで読みづらい話もたくさんあったことを記憶しています。
⑤ キャラクター
私はライトノベル作家を志しているので、必然、こういう要素も含まれることになります。ライトノベル以外のジャンルでは、それほど重要視されない要素なのだそうです。
ライトノベルのキャラクターは、インパクトが大切です。みんながみんな平凡な一般人では、あまりウケが良くありません。何かに強い拘りを持っているとか、完璧超人なのに致命的な弱点があるとか、そういう極端な性格のほうが好まれる傾向にあるようです。
それでいて共感できるキャラクターでないといけないというのですから、全くもって無茶な話です。
私の価値観では、大部分は共感ができるキャラクターで、ある一点だけ人間としてのタガの外れている部分がある、ぐらいがちょうどいいのではないかと思います。
よく見かけたのは、メインキャラクターはキャラクターがしっかりしているのに、脇役や敵方などは、おおよそ人間らしくない言動をしている、という作品です。脇役があってこそメインキャラクターが生きるのですから、脇役もちゃんと人間として扱ってあげましょう。
⑥ 独創性(オリジナリティ)
一つの作品がヒットすると、それの劣化コピーのような作品が大量に出てきたりします。一時期は魔法系の作品ばかりの時がありましたし、最近は勇者とか魔王とか、主人公がゲーム世界に入りこんでしまう話が異様に多いように思います。
そういう「流行に乗ってみる」というのもアリと言えばアリなのですが、評価する側としてはNGです。だって、似たような小説ばかりだと飽きるじゃないですか。評価する人も、普通の読者も。
最良なのは、その人にしか書けない物語を書くことなのですが、それは恐らく不可能です。人間が物語を紡ぎ始めてから何千年経っているのかは知りませんが、その間に物語のパターンは全て書き尽くされているからです。
ならば独創性とは何なのかと言いますと、それはある意味希少価値であり、ある意味時代の先を見る力でもあります。
先に挙げた①~⑤の要素。これらは全て、現在の価値観を基準にして考えたものです。今大ヒットしている作品でも、数十年前に世に出していれば誰にも見向きされないかも知れませんし、その逆もあり得る、ということです。
「流行に乗ってみる」のはダメですが、「流行を先取りする」のは良いことなんです。先取りした物語は、例えそれが100年前に創られたのと似たような話であっても、成功するんです。
つまり、先に書いた①~⑤の価値観に捉われず、自分が良いと思った物語を、自分独自の手法で書き上げる、ということです。「人に理解されなくてもいい」とでも言うかのような、チャレンジャー精神溢れる人でないとこれはできないと思います。
以上、小説を評価する時の6つの要素でした。なんだか途中から偉そうな書き方になっていましたね。一次落ち風情が、どうもすみません。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
上の記事に関して、何か思われることがあればコメント欄にご意見をお寄せください。「これは違うだろ」とか、そういう批判的な意見でも構いません。お待ちしております。
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