私は、最初の一文で悩むことはほとんどありません。書き始める前のプロットを考える段階で、物語の出だしも自然と思い浮かぶからです。
もちろん、思い浮かばなかったこともあります。そんなときは導入部を放ったらかしにして、書きやすいところから書き始めます。悩みを先延ばしにしている、というわけではなくて、そのほうが書きやすかったりするんです。
どちらにしても、最初の一文を書くことができないのは、これからどんな物語を書こうとしているのかが私自身はっきりとわかっていないせいで書けない、というのがほとんどです。
その一方で、とりあえず導入部を書いたけれどもなんだかしっくり来ない、ということはあります。
なにせ導入部はその小説の顔となる部分で、導入部が悪ければ後の話も読んでもらえないのですから、他の部分よりも力を入れるのは当然です。導入部をごっそり入れ替えたり、なんてこともザラです(これするとあとで辻褄合わせが大変なんですよね……)。
しかし以前の私は、導入部にそれほど力を入れていませんでした。私はもともと、小説は結末こそが一番大事だと考えているので、その分、導入部は軽視していたところがあります。
導入部を特に重要だと思うようになったのは、小説をネットに掲載し始めてからでしょうか。もっとたくさんの人に読んでほしい、と考え始めると、自然と導入部を意識するようになりました。
世の中には宮沢賢治先生のように、人知れず物語を書いていても書き続けることができる人がいます。
しかし私はそうではありません。何の為に書いているのかによって、モチベーションが大きく変わります。
私が最初に完結させた小説、「人間殺人」は、「シリアスな物語が読みたい」と呟いている人をネットで見かけて、その人に読んでもらうために書きました。その前から書き始めていた物語もあったのですが、そちらを書いているときよりも遥かに早いスピードで書くことができました。
また、ライターとして活動を始めて、始めてシナリオライターの仕事を請け負ったとき、私はそれまで以上のスピードを出すことができました。(具体的にどれくらい……というのは聞かないでください。プロ作家に比べればお粗末なスピードです)
物語を書くときは、何を書くのか、どうして書くのか、というこの2つがはっきりしているほうが、書きやすいです。
どうして書くのか、という問いには、「自分の書いた物語で人を感動させるため」という答えを常に持っている私ではありますが、やはりできれば、目先の目的も欲しいところです。
ライター活動にしても、お金を貰うためというよりも、書く目的をはっきりさせるため、というほうが強いのかもしれません。遊びで物語を書く自分は許せませんが、それで1円でも稼いでいるのなら、自分を許して、全力で打ち込むことができます。
さて、ここまで私の体験談を滔々と書き連ねてきましたが、少しは参考になったでしょうか。あくまでも体験談ですから、人によっては全然参考にならないかもしれませんね。申し訳ないです。
ここで少し話を戻して、導入部の話をします。具体的にはどんな始まり方がいいのか、という話です。
クリエイティブな事柄にこういう答えを求めるのは間違っているとは思いますが、しかし今の私が考える理想の始まり方は、物語全体の旨味を凝縮したもの、です。
ギャグテイストなら最初にギャグをかます。サスペンスなら1行目から事件を起こす。恋愛ものなら、あまい恋心の心情描写から始めるのもいいかもしれません。
最初の1ページで物語全体の雰囲気が掴めるのが、良い始まり方だと思います。
一方で、私が苦手な始まり方は、とりあえず入れてみた的な、意味のわからない文章です。
伏線にすらなっていないものは論外として、仮にそれが伏線になっていても、読者に微塵も理解させる気のない文章から始まるのは、苦手です。ましてやこれが重~い、暗~い、長~い話だったなら、とても読む気にはなれません。それなら素直に、プロローグなしで本編から始まったほうがいいと思います。
(……なんて書いているうちに、私自身も過去に相当意味のわからないプロローグを書いたことを思い出しました。ああ恥ずかしい恥ずかしい)
導入部に限った話ではありませんが、どのシーンをどこで読者に見せるかは、良い物語を書く上では重要な要素ですよね。構成力、というやつです。
推理モノで言うなら、良いトリックは思いついても、そのトリックでどうやって事件を起こすか、答えへのヒントをどのように出すか、どうやって解決に繋げるかによって、物語のレベルが大きく変わります。
私はこの構成というのが苦手で、だからこそ最近は推理モノを書かないことにしているのですが、いつかは複雑に絡み合った物語を書いてみたいと思っています。
なんだか取り留めのない話になってしまいましたが、今日はこの辺りでおしまいにします。何かご意見がありましたら、下のコメント欄までお願いします。